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2024年6月開催株主総会における株主提案の概況と特徴~「企業会計」2024年10月号~

  • 佐藤篤
  • 2024年10月18日
  • 読了時間: 3分

先日、某アクティビストが某社の株式を取得したとのことで話題になっていましたが、それに関連して、「企業会計」2024年10月号に掲載されていた「株主提案の概況と特徴」(林良樹)を読んでみました。

 

全体概況

  • 2024年6月総会において株主提案があった会社は91社で、3年連続で過去最多を更新。議案数は336議案。

  • 提案議案数の内訳は、定款変更議案が220件と最も多く、次いで剰余金処分に関する議案が41件と続く。定款変更議案が最も多く提出されるのは例年の傾向。

 

株主提案の可決事例

  • 2社で確認された。

  • 取締役選任議案において、賛成票の多い順に8名が選任されたが、そのうち3名が株主提案の候補者であった事例。

  • 取締役の任期を1年とする定款変更議案が会社提案と同内容であったため、招集通知上「会社提案・株主提案」として当該議案を上程し、可決された事例。

 

株主提案の取下げ・撤回事例

  • 6社で確認された。

  • 3社はストラテジックキャピタルから提案を受けた先であり、取下げ理由は同株主のウェブサイトに公表されている。

  • 残り3社については、取下げ・撤回は公表されていないため不明。

 

会社側で取り上げなかった事例

  • 株主提案が会社側の判断により有効な株主提案として取り上げられなかった事例について、5社6議案が確認されている。

  • 4社における4議案は、買収防衛策の廃止を求めるものであった。これらの提案は会社法上、買収防衛策の廃止が株主総会の目的事項に該当しないため、または会社提案として上程されている買収防衛策継続議案に対する反対の意思表明に過ぎないため、株主提案として扱われなかった。

 

アクティビスト投資家からの株主提案

  • 2024年6月総会において、アクティビスト投資家による株主提案を受けた会社は46社で過去最多。提出された議案数は124件で、2022年の132件に次ぐ高水準。

  • 近年のアクティビスト投資家の対話のスタイルは、従来の対立的なアプローチから、より穏やかでエンゲージメントを重視するスタイルへと変化しており、その結果、提案内容も中長期的な視点を持ち、他の機関投資家からも賛同を得やすいものへと変化している。

 

アクティビスト投資家から提案を受けた会社の属性

①時価総額

各階層にわたって分散している。

⓶業種

前年に引き続き「建設業」が増加傾向。また、「化学」及び「鉄鋼」業界でもそれぞれ前年比で3社の増加が見られた。

一方で、「電気機器」業界は4社の減少を記録した。

③PBR,ROE

低PBR・低ROEの会社が株主提案を受けやすい傾向に変化はないが、一定の資本効率性を有している会社でも、さらなる改善が期待できる場合は株主提案の対象となっている。

 

提案内容

  • 本年の特徴として、議案数において株主還元に関する提案が増加した一方で、ガバナンス関連の提案は減少している。これは多くの会社において独立社外取締役の員数等ガバナンスの形式が整備されてきたことが影響していると推察される。

  • その他、資本コスト関連の開示の強化を求める動きが顕著。

 

株主還元に関する提案を受けた会社の特徴

  • 自己資本比率が業種別の平均を上回る会社が提案を受けやすい傾向にある。

  • DOEを目標数値に掲げた株主提案は、前年の3社から今年は14社と大幅に増加しているが、要求しているDOEを配当性向に換算すると100%を超える水準となるものも見られた。

 

資本コスト関連の開示に関する提案を受けた会社の特徴

  • PBRの改善が鈍く、資本コストやキャッシュアロケーションに関する情報開示が不十分である傾向が見られた。

 

感想

個別の事案については見聞きすることがあっても、このようにまとまった分析を目にする機会はなかったので、面白く読みました。

ガバナンスに関する提案は減って、その代わりに株主還元への提案が増えているという点は、何となくですが、気にしておいたほうがいいように感じました。

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