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2022年3月期有報の時価算定会計基準に係る注記分析~「企業会計」2022年12月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年12月30日
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2022年12月号の特集は「決算開示のトレンド2022」でした。

その中の時価算定会計基準に係る記事を読んでみました。

以下、メモ書きと感想です。


分析対象

2022年4月1日現在JPX400に採用されている3月31日決算会社で、2022年6月30日までに有報を提出している日本基準採用企業198社の「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の注記内容


全体的な傾向

  • ほとんどの会社でレベル1及びレベル2の時価に関する記載がある。

  • レベル3の時価に関する記載がある会社は198社中57社で、その約半数を銀行業、その他金融業、保険業といった金融関係の業種が占める。


レベル1に関する開示

  • 時価をもって貸借対照表価額とする金融商品のうち、レベル1の時価に該当するものとして注記されている項目で最も多かったのは、その他有価証券の株式であった。

  • 時価をもって貸借対照表価額としない金融商品のうち、注記する時価がレベル1に該当するとされている項目については関連会社株式、関係会社株式、満期保有目的の国債が多かった。


レベル2に関する開示

  • 時価をもって貸借対照表価額とする金融商品のうち、レベル2の時価に該当するものとして注記されている項目については、幅広い内容のデリバティブ取引の開示が目立った。また、その他有価証券として保有している社債や地方債も開示されているケースが多い。

  • 上場株式についてはレベル1に該当することが多いと考えられるが、TOKYO PRO Marketに上場している株式について、市場流動性などを考慮してレベル2の時価に分類している事例もある。

  • 時価をもって貸借対照表価額としない金融商品のうち、注記する時価がレベル2に該当するとされている項目については、長期借入金、社債といった資金調達に係る負債項目を多くの会社が開示している。これらは信用リスクがインプットの一つになると思われるが、自社の信用リスクを観察可能か否かがポイントになると考えられる。


レベル3に関する開示(金融関係の業種を除いた分析結果)

  • 時価をもって貸借対照表価額とする金融商品のうち、レベル3の時価に該当するものとして注記されている項目について特定の偏りは認められないが、その他有価証券の社債と株式が比較的多い。

  • その他有価証券の株式については、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」により、在外子会社をIFRSで連結している場合において、在外子会社が保有する非上場株式がIFRSに基づき時価評価されているケースと考えられる。

  • 時価をもって貸借対照表価額としない金融商品のうち、注記する時価がレベル3に該当するとされている項目についても特定の偏りは認められないが、満期保有目的債券の社債、長期借入金が比較的多い


感想

以前弊ブログで、国債についてレベル2で開示されているケースを取り上げたことがあります。その答え合わせを期待して読んだのですが、そこには触れられておらず、少々残念でした。ちなみにレベル2に分類された国債は変動利付国債ではないかと推察しています。


また、上場株式について流動性を考慮してレベル2に分類している事例やその他有価証券の株式でレベル3に分類される具体例を知れたのは収穫でした。ただ、少しマニアックなので実務に展開できるかは微妙なところではありますが。

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