固定資産実査と不適切会計~㈱ダイオーズ~
- 佐藤篤
- 2022年8月26日
- 読了時間: 3分
あまり目にする機会のない不適切会計のリリースだな、と思いました。
2022年8月15日に株式会社ダイオーズが「2023年3月期第1四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出に関するお知らせ」をリリースしていました。
いわゆる不適切会計による提出期限延長の申請なのですが、その内容については以下のように記載されています。
(前略)固定資産システムと会計システムの間に固定資産残高の不一致が判明したことで、有形固定資産の残高、減損評価結果に疑義が生じたことから、その原因究明を行うため社内調査を行っておりました。この調査の過程で、当初想定していた会計システムと固定資産管理システムの差異原因究明だけでなく有形固定資産の現物確認まで調査対象範囲が拡大したことにより、(以下省略)
固定資産台帳と固定資産現物の突き合わせは固定資産実査と言われます。
これを実際に行なっている企業は意外と少ない印象を持っていて、個人的に拠点監査に行った時の定番の指摘事項でした。
固定資産実査は固定資産台帳に計上されている資産が実際に存在するか、存在していても業務に使用されているかを一つ一つ突き合わせてチェックする作業です。
固定資産実査の一般的なエラーとしては、
現品は廃棄処分され存在しないにも関わらず、固定資産台帳上除却処理されていないケース、
現品は存在するがすでに業務上使用されていない資産について、固定資産台帳上計上され減価償却が継続しているケース
が挙げられます。
1.は減価償却が終わっていれば簿価も少額であるため、監査上問題になることはさほど多くありません。一方で現品が存在しない要因が不正転売によるものであることが固定資産実査で発覚してしまうこともあり、そうなると話は大きくなります。
2.は単純な処理ミス(現場が除却稟議の申請を失念していた、固定資産台帳管理部署で承認済みの除却稟議が回ってきたにも関わらず、除却処理を失念していた等)の場合もありますが、年度予算上除却金額を見込んでいなかったため等、除却処理の必要を認識していながら意図的に処理を行っていない場合もあります。
上記2つもそうですが、固定資産実査で検出されるエラーのほとんどは固定資産台帳に計上されているが現品がない、もしくは現品はあっても使用されていないというパターンです。
稀に逆のパターン、即ち固定資産台帳には計上されていないが、現品はあって使用されていることがあります。
例えば建物付属設備を建物に一括して計上しているようなケースです。
一つ一つ突き合わせしていくと、当然計上されているべき空調や自動ドア等が固定資産台帳に計上されていないことがあり、理由を聴取すると、建物に一括して計上し減価償却しているという説明を受け、ひっくり返りそうになることがあります。
建物付属設備を建物に含めると減価償却は少なく計上されるため、税務調査でも指摘されることは(恐らく)なく、会計監査で初めて発見されることになります。
まあ、そうよくある事例ではありませんが。
その他、固定資産での不正のパターンとしては、全く関係のない支出を固定資産として計上し、費用化を繰延べることで利益をかさ上げする手法があります。
特に海外子会社の場合、現物を確認するのが困難なため証拠書類を偽造されると発見できないこともあります。
今回の㈱ダイオーズのケースは誤謬なのか不正なのか分かりませんが、海外子会社での不適切会計だったとのことで、本体の会計監査人の目が届きにくかったことは確かです。
どういった性質の不適切会計だったのか、調査報告書の公表を待ちたいと思います。
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