原価計算基準60周年~企業会計2022年4月号~
- 佐藤篤
- 2022年5月10日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2022年4月号の特集は『「原価計算基準」は生きた化石か』でした。
なかなか予想外なところ攻めてくるなあ、と思っていたら、今年で制定60年とのこと。
そんなに歴史ある基準だったのかと驚いたのですが、さらに驚くべきはこの60年間で一度も改訂されたことがないという事実です。
それにも関わらず、特別古臭さや時代遅れ感もない基準だという印象があります。ただ、それが何故なのかまでは思い浮かびません。
そんな訳で、当該特集の一記事『原価の本質を突く「原価計算基準」』(高橋賢 著)を読んでみました。
以下「原価計算基準」は「基準」としています。
著者(高橋氏)が考える基準の特徴三つ
原価計算制度に関する規定であると同時に、管理会計に関わる指針であること。
原価計算の原理原則として非常に完成度が高いこと。
弾力的な解釈と運用が可能であること。
実務家への調査では1985年と2002年では「改正する必要がない」を「改正すべきである」が上回っていたが、2012年の調査では逆に「改正する必要がない」が「改正すべきである」を上回った。
一方で「基準」とIFRS等の会計基準とのすり合わせは喫緊の課題である。一例をあげれば後入先出法の問題。
「基準」に合致しないということで新しい原価計算・管理会計の技法の導入を躊躇する場合もあるらしい。財管一致の状態を意識する企業が意外と多いのかも知れない。
改訂に関わる近年の議論としては、「基準」そのものを改訂するのではなく、財務報告との整合性を取るために「解釈指針」のようなものを設定して提示していくという方向性
著者(高橋氏)の意見は、現在の原価計算の体系を大きく変えてしまう必要は今のところなく、その根底にある「基準」を大きく改訂する必要はないと考えている。あまりに実務に浸透しているため、改訂は無用の混乱を招きかねない。
感想
原価計算は企業によって、例え同業種であっても、かなり方法が異なります。
その企業のおかれた状況はもちろん、管理会計に対する思想のようなものが原価計算方法には反映されるからです。
そのことを最初から念頭に置いて、敢えて緩やかな基準としたことで、結果的に陳腐化を免れてきたということなのかも知れません。
そういった意味で、当初「基準」を設定した方々の見識の深さには驚かされますし、下手に改訂して陳腐化を早めてしまう位なら、改訂せずに解釈指針で対応するという方向性は理に適っているように感じました。
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