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利益と営業キャッシュフローの乖離(その1)~ユニ・チャーム㈱2021年12月期第3四半期決算短信~

  • 佐藤篤
  • 2021年11月9日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年11月11日

決算発表シーズンたけなわということもあって、決算短信レビュー関連の記事が多くなっていますが、先日はユニ・チャーム株式会社(以下「ユニチャーム社」)の2021年12月期第3四半期の決算短信を眺めておりました。


予想通り増収増益の決算でありましたが、添付されていた連結キャッシュフロー計算書を見て引っ掛かりを感じました。

その引っかかりの正体は、税引前四半期利益が前年同期は706億円、当四半期は1,016億円と310億円増加しているにも関わらず、営業キャッシュフロー小計欄の金額が前年同期1,228億円、当四半期1,100億円と逆に128億円減っている点でした。


こういう時に会計士として真っ先に頭に思い浮かべるのは、売掛金や棚卸資産を大きく増加させることで利益を捻出し、それがキャッシュフローの悪化として表れているのではないかという疑念です。要は売掛金と棚卸資産を過大計上して損益を操作しているのでは、と疑ってしまうのです。


この点、ユニチャーム社の連結キャッシュフロー計算書をきちんとみてみると、前年同期に火災損失として160億円計上されていたことが影響しているとわかります。当該損失の内容は焼失した有形固定資産や棚卸資産などが大半を占めており、キャッシュアウトを伴わないため、前年同期の税引前四半期利益と営業キャッシュフロー小計欄の乖離に影響しています。


一方で当四半期の連結キャッシュフロー計算書上、棚卸資産の増減額が△164億円あり、これが当四半期の税引前四半期利益と営業キャッシュフロー小計欄の乖離に影響しています。この増加要因については定性的情報にも詳細な説明はなく、何とも判断しかねますが、増収に伴い棚卸資産残高が増加するのは自然な動きですので、回転期間が著しく悪化していない限りはあまり気にする必要はないように思います。


その他ユニチャーム社の短信を見ていて良いなと思ったのは、コア営業利益を開示してくれている点です。

ユニチャーム社の定義ではコア営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を控除した利益とされていて、日本基準での営業利益と同じ概念と言って良さそうです。

個人的にIFRSの気に入らない点は、収益と費用を非経常と経常で区別しないため、営業利益の期間比較がし辛いところなのですが、この点に配慮されているのが好印象であります。

他のIFRS採用企業でもぜひ取り入れてほしいものです。


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